風俗営業を行う個室付公衆浴場、つまりソープランドを巡って、「売春しているのではないか」という警察への通報をきっかけに経営者らが逮捕された。表向きはなんとも噴飯ものの不可解な事件だが、考察していくと風俗業界と取り締まる側の警察との異様な関係性が浮かぶ。
今回の事件をおさらいしよう。広島県警は、広島市の繁華街のソープランドが女性従業員に男性との売春を行う場所を提供したとして、売春防止法違反の疑いで会社役員の男(48)と店長の男(35)を逮捕した。捜査の端緒は、『この店が売春しているのではないか』という通報だった。会社役員の男は派遣型のデリヘルも手掛けていて、風俗営業の経験が深く、店長に店舗運営の指南をしていたとみられる。全国紙記者が解説する。
「ソープランドなんだから、売春が行われているのは当たり前の話で、何をいまさらという印象です。ちなみにこの店は、風営法上の店舗型性風俗特殊営業の届出をしていたとのことです。
店舗型風俗特殊営業は、ソープを1号に、ヘルス、ストリップ劇場、ラブホテル、アダルトグッズ店、出会い喫茶と計6号に分かれ、都道府県ごとの条例で、病院や学校から一定距離における営業禁止などが厳しく定められており、こういった規制はきちんとクリアしていたようです。
ただ、ソープとしての営業が法令で認められていても、当局の腹積もり次第で、いつでも管理売春容疑でパクられる恐れがあるという危うさが浮かび上がります」
そもそも、事件の端緒となった"通報"とはどのような経緯で入るものなのか。中部地方の現役刑事が語る。
「看板を掲げて営業していて、これまで見逃していたのに検挙するには理由がいるから、『通報が入った』という体にしたいのだろう。別に、通報の詳細なんて裁判資料で提出するもんじゃないからいくらでも警察で仕立てられる。
とはいっても、風俗店は通報がしょっちゅう入る。まずは客からだよね。カネの支払いで揉めたり、女のレベルやサービスが悪かったとかの腹いせ。あとは、同業者のチクリ。ライバル店が潰れれば、自分たちの店に客を呼び込める。女の子の引き抜きとかのトラブルとかがざらで、足の引っ張り合いが多い世界だしさ。
通報がなくとも、例えば不良少年の所持品からソープの会員証が出てきて、検挙に至るなんていう"もらい事故"もあるし。摘発の端緒なんていくらでもあるんだよ」
叩けばホコリが出てくる業界で、一体どういった店が狙われるのか。口ごもる刑事に代わって、東日本で営業するソープランドの店長が明かす。
「現役の組員が経営に入り込んでいる店はまず目をつけられるが、そうでなくても組合に入らないで一匹狼でやっているところは挙げられやすい。うちは特殊浴場組合に月々20万円納めているが、組合は地元の所轄署の幹部クラスに対する接待もやっている」
とはいえ一昔前に比べると、ソープランドと警察の癒着は「薄く」なった方だという。(抜粋)